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お釈迦様の指 ~子育て・教育の在り方~

ある日、お釈迦様が天上から人間界の様子を見ていると、ある男が、たくさん荷物を載せた荷車を引いて歩いていました。しばらくすると突然ぬかるみにはまって荷車が動かなくなってしまいました。男は、何とか引き上げようと一生懸命頑張りますが、どうしても上がりません。バランスが悪い状態なので、荷物を一度おろして荷車を軽くすることもできません。街まではまだ距離があります。そこで男は、そばにあった石にすわって誰かが通りかかるのを待つことにしました。荷車をぬかるみから引き上げるのを手伝ってもらおうと考えたのです。しかし、いくら待っても、こんな時に限って誰も通りかかりません。悪いことに日も暮れかかってきました。

男は、人に頼るのをやめます。何とか自分の力で引き上げなくては、と考え、重い重い荷車を必死になって引き始めました。なかなか荷車は動きません。少しは動くのですが、あと一歩のところで、またぬかるみの中に戻ってしまうのです。男は何度も何度も荷車を引きます。汗はダラダラ、おなかはペコペコ、もうヘトヘトに疲れ果ててしまいました。日暮れは近づいてきています。何とか頑張らなければと、男は渾身の力を込めて荷車を引きました。荷車は大きく動きました。しかし、その力はぬかるみから出るにはあとわずかに足りないものでした。その時、天上でその男の姿を見ていたお釈迦様がすっと手をさしのべ、人間には見えない指で荷車を後ろからすっと押したのです。すると荷車はぬかるみから出て、カラカラと音を立てて元通り進み始めました。

男はお釈迦様の存在には全く気づいていません。最初から最後まですべて自分の力でやり遂げたのだと考えています。当然お釈迦様も男の夢に出て「私がお前のことを助けてあげたのですよ」などと恩着せがましいことは言ったりはしません。男は永遠にお釈迦様の助けのことは知らないままです。